May 18 Monday 2020

選手として選手以上のことを考える

いつまで続くか、お家時間。最近はチームの過去の動画をYouTubeで漁ったり、ホームページを読み込んだり。個人的にスポンサー企業のリサーチなどをする際も、まずは企業理念やブランドメッセージといった部分からまず調べ上げるし、例えば企業面接などでも、これらは基本情報としてまず頭に入れておくべき部分かと思う。一般社会では当たり前だと感じることでも、スポーツ界ではどうなのだろう。どれだけのプレイヤーが自身の所属先のビジョンなどを意識しているのか。そもそもそんなこと意識したことない、知らないっていうプレイヤーもいることだろう。もし、そんなの関係ない、ピッチで結果を出すことだけ考えていればいいと思っているのであれば、ぜひ一度この投稿を読み、考えてほしい。結局は自分自身の環境に繋がってくることなのだから。

例として所属クラブであるスフィーダ世田谷FCのクラブ紹介ページをみてみる。(クラブ紹介ページ)まず最初に目に入ってくるのが、選手たちが抱き合い喜んでいるイメージと”スフィーダ世田谷FCの使命は、サッカーに対し純粋な想いを持った女性へ、最適な環境を提供すること”という一文。これがスフィーダ世田谷FCというクラブとしてのビジョン/ミッションにあたる。さらにみていくと、法人名や所在地などの情報が並び、その下にクラブ名やその由来などが記されている。SFIDAはイタリア語でいう”挑戦”という意味を持ち、今の自分に満足することなく、更なる高みに挑み続けられるチームであることを目指し、名付けられたとのこと。もちろんエンブレムやマスコットも、それにちなんだコンセプトで考えられている。これらのことから、まずは”サッカーに対し純粋な想いを持った女性にとっての最適な環境”というものを定義し、その提供の実現に向けて挑戦する姿をオン、オフで見せていく必要がある。監督である川邊さんは”サッカーにミスはつきものであり、それすらを活かすサッカーを目指す”ということを公言しており、それによってピッチ上で選手たちが挑戦しやすい環境はつくられるはずなので、これはクラブとしても強みであると思う。あとは、ピッチ外での活動や選手たちの言動を上記のことに擦り合わせていき、発信していくこと。

そうやって発信していったメッセージや、それを体現するための活動に共感し、集まってきた人たちが、クラブと関わりのある経験を通じて、いわゆるファンという存在となり、それまではもちろん、その後のクラブとの関わりのなかで生まれる感情などのイメージがそのまま、クラブやクラブエンブレムなどと結びついていく。この過程がブランディングであり、そのイメージをポジティブに保つことがブランディングマネジメントである。エンブレムがプリントされたものは絶対に地面には置かない、などというこだわりを海外で聞くことがあるが、それはただのイメージであるはずのエンブレムが、その人にとっての誇りと感じられるほどの強い感情などの結びつけを行ってきた証であり、そんな光景を町のあちこちでみかけられる環境をアメリカやドイツでも目の当たりにしてきた。選手やクラブの人間が人生を賭けて活動するなかで、そういった感情と結びついていくのはある意味自然なことであるが、それをクラブ外の人たちが体験する。それくらいに強烈なものを”文化”というのではないだろうか。

もちろん文化として根付かせていく過程のなかには様々な道があり、そのうちの一つが最近勉強している”スポーツデザイン”であり、それを基とした自身の事業展開であると考えている。例えば、女子サッカーがより社会に入っていくために社会貢献活動をしていこうと考えても、プロリーグではない環境下では、選手たちへのそういった活動への参加要請もなかなか厳しいところがある。実際にスフィーダも社会貢献活動を増やしていこうとクラブの副代表としてスポーツ社会学研究者である方を迎えたものの、上記の問題に直面しているという話を聞いている。そうなってくると、私みたいに比較的自由に動け、かつMake Your Own Ball Dayのようなはっきりしたものを持っている人間が活きてくる。元々MYOBDも心の底からいいなと感じて、やっていきたいと思えた活動だから、それがチームの抱える問題の糸口となるのであれば尚更嬉しいことであり、もし活動にクラブのバックアップを得られるということになれば、こちらとしても有難い。

個人的な事業においての企画はすでに始動しているものも含めて4つあるが、そのどれもが”女子サッカーを文化に”というところに根底がある。しかし、女子サッカーに興味がない企業にとってそれはなんの魅力ももたないものであり、それでは女子サッカーにとっての成長はありえない。そしてそれはスポーツ全般においても同じことで、”スポーツデザイン”はそのような課題に向かってアプローチしていく。”女子サッカーを文化に”という前提の活動を一般社会や企業においても有益と感じさせ使ってもらうために、自身やクラブができることや強みなどの手札のなかからデザインしていく。そういった内容で近々、スポーツデザイン提唱者である、高橋孝輔さんと対談させていただくので、そのなかで詳しい事業内容なども伝えられればと。

ピッチに立ってなんぼの選手がその価値を発揮できないいま、様々なクラブや選手が工夫を凝らした企画や発信を行っていて、とても勉強になるし、その裏で暗躍してそうな人たちの顔もみえてきて楽しい。元々、スポーツは商品として優れた価値を持ち合わせていながら、日本スポーツ発展の流れのなかではその真価を発揮できずにいた。ただのエンターテイメントでしかないスポーツではその可能性に限りがある。それが今回の一連を受けて、各クラブや選手がどのように捉え、行動していくのか。

“女子サッカーを文化に”

はっきり言ってそんなの厳しい、ただの絵空事だと言われるが、スポーツ/女子サッカーの力を信じる者としてその爪痕くらいは残してやりたい。

Published on May. 18, 2020 by Serina Kashimoto #86