June 06 Saturday 2020

サッカー世界平和宣言 #たちまち一緒にボール蹴らん?

“神様はこの世界にサッカーという素晴らしいスポーツをさずけてくれた。戦うなら正々堂々サッカーで戦おう。僕はサッカーで世界平和をうったえたい。サッカー世界平和宣言 これがぼくの優勝スピーチです。”

キャプテン翼といえばこのシーンを一番に心に思い受かべる、実は広島県出身の私。1945年8月6日、これを答えられなかったクラスメイトがほんまに広島人なのかと、みんなからブーイングを受けるくらいに広島の子どもは平和に関しての英才教育を受けて育つ。そのおかげで幼い頃の私はいつ爆弾が落とされてもダメージを最小限に抑えるために影を探して歩き、お小遣いで買ったミサンガには世界平和を願い、はだしのゲンの主人公の妹が亡くなったシーンを読んでは、当時溺愛していた末っ子の弟と被って小学校の図書館で号泣した。(笑)そんな私だったから、初めて翼くんのスピーチのエピソードを読んだとき、ものすごく心に刺さったし、なんなら自身の不安を解消するいい解決口を見つけた!くらいにも思った。

そんな私も高校生となり、16歳のときに臨んだアジア選手権。ホテルで生まれて初めて北朝鮮の選手達を目にし、政治はおろか国としてもあんなに閉鎖的でも、こういう場所なら出てくるのかと、翼くんの言葉が脳裏をよぎった。そこから更に月日は流れ、Butlerでのチームメイトとの会話のなか、
“せりなは”あの広島”で生まれて育ってるけど、私たちアメリカ人に対してどう思ってるの?”
と、聞かれたことがあった。私は、
“原爆とか戦争に怯えて生きてきたし、ものすごく嫌いだけど、だからと言って今のあなたたちに嫌悪感などを感じることはない。逆に日本人の私に対して、あなたはパールハーバーでのことなどもあるけどどうなの?”
と、逆に聞き返した。すると彼女も
“私もあなたと同意見。過去は過去として同じ過ちを繰り返さないためにも忘れてはならないけど、だからと言って、今を生きる私たちの関係にまで響くことはないよ。”
と。互いに憎みあって命を狙い合うより、一つのボールを一緒に追いかけあって、勝った負けたと一喜一憂し、いつまた抜きされるか油断ならないなかで自分もチャンスを伺う。そっちのほうが全然楽しいよねーと、二人で笑いあった最高の思い出。

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(NYのチームメイトたちと)

いま世界では、George Floydさんが警察の拘束下で死亡した事件を発端に人種差別への抗議活動が広がっているけど、日本の社会を生きているなかでは正直あまりぴんとこない事柄かもしれない。人種差別問題にしても、今回のコロナの一連で浮かび上がったように、黒人に対するものだけに限らなかったり、人種より男女差別などのほうがまだ身近に感じることかもしれない。いづれにせよ、こういったものはとても繊細なテーマであり、歴史的背景や情勢をきちんと理解していなければならないため、詳しいところまで踏み込むのは他の人にお任せして、そこから私もまた学ぶ必要がある。でも、もっと単純なところとして、チームメイトと私との会話。色、国籍、性別など、いろいろ違いはあるだろうけど、大きくまとめてしまえばみんな人類ヒト科で、もっと大きな宇宙のくくりでみてしまえばみんな宇宙人。そのくくりのなかで、目の前の人が誰なのかというのを自分自身できちんと知っていくこと。そのうえで合う合わないはあるから、いいなって思うなら全力でその人のことを愛せばいいし、ちょっと苦手ならわざわざ傷つけるようなことをせずとも、しれっとフェードアウトもできる。

そんな簡単な話ではない、と一蹴されてしまうかもしれないけど、そんなことは自分でも理解している。実際に、とても残念なことに、私にとってはプラスな経験が多いスポーツの世界でもこういった問題は存在している。だから、声高々とスポーツは正義だ!平和や平等の象徴だ!とまではまだ言えないけど、まずは自分自身の周りからはじめて、そこからサッカー/スポーツを通して、互いに一人の人間として尊重し合える環境をつくっていきたい。アメリカでもドイツでも、周りに恵まれてきたおかげで、素晴らしいくらいに楽観的に育ったから、たちまち一緒にサッカーやらん?って。そのくらいのノリで、みんなでボール蹴れるようになればそれってものすごく平和なことだと思し、それが私にできるサッカー世界平和宣言かな。どこへ行ったときも実際そうやって言葉が通じない相手とも心を通わせてきたし、まあ無理ではないよね。

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(ドイツ2日目。トライアウトが決まるまで公園で一緒にボールを蹴って友だちになった子たちと。)

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(試合前に両親と一緒に歩いて大学4年間の歩みをお祝いしてもらうシニアナイト。日本に両親がいる私のために、”せりなはうちの子のようなものだ”と、片道4時間かけてわざわざ来てくれたチームメイトの両親と一緒に。)

Published on Jun. 06, 2020 by Serina Kashimoto #88